うわ。ミリア凄いな……。ユウヤは、ただただ感心するばかりだった。アッサリと商談や交渉ではなく、指示を出した感じで終わったな。元々ミリアを相手にした時点で、それはもはや交渉や商談ではなかったのだ。ユウヤは、満足そうに微笑むミリアの横顔を眺めながら、心の中で、その有能さと、自分への深い愛情を改めて感じていた。
ギルドマスターが深く頭を下げ、心からの感謝を述べた。
「治癒薬があれば、安心をして冒険者が活動できますので、冒険者ギルドとしては助かります」
「軍の方も助かります」
国王もまた、安堵の表情で頷いた。
「……それで……価格の方は……?」
ギルドマスターが恐る恐るといった様子で、最も重要な質問を口にした。
「治癒薬でしたら、銀貨一枚で販売をしていますよ」
その言葉に、国王とギルドマスターは再び目を見開いた。
「えっ!?……銀貨……一枚ですか?安すぎじゃないですか?銀貨二枚はすると思いますが……良いのですか?」
ユウヤは、治癒薬の効能と制限を説明し、価格の設定は医師の生活と冒険者の生活を考えてのものだと話した。
「高くしても良いんですけど、駆け出しの冒険者が買えなくなりますしね」
その言葉に、ギルドマスターと国王は深く頷いた。
「なるほど……それは助かります」
「他の職種の人達と争いは避けたいので……それに医師にも頑張って欲しいのですね。俺が販売を止めた場合、医師がいないと王国が大変なことになりますから」
ユウヤは、何度も丁寧に説明をする。値段を高くしても売れるだろうが、一番必要な低級の冒険者が購入できなくなる。かといって値段を安くすれば、病院関係者や他の薬屋の需要がなくなり、恨まれるだろう。自分がこの国から撤退したり、薬を作らなくなったりした場合に、医療が崩壊してしまっては困る。
「はい。医師の育成にも力を入れるように指示を出しておきます」
国王は、ユウヤの言葉に真剣な表情で頷いた。ユウヤの知っている物語では、ギルドは王国とは別物で国王の命令はきかない設定が多いが、この世界では命令や介入ができるようだ。
国王がそう返事をすると、話の区切りが付くのを待っていた兵士が、SSS級の認定証と勲章を国王に手渡した。その認定証は、豪華な装飾が施され、王国の最高位の証であることを示していた。
♢勲章と一時帰宅「本来ならば、授与式を開き渡すのですが……」
グラシス国王は、目の前に置かれた豪華な"SSS級認定証"と"勲章"を指し示した。その顔には、最高位の冒険者に対する敬意がにじんでいる。
「いや……恥ずかしいので遠慮しておきます」
俺は素直にそう答えた。大勢の前で注目されるのはどうにも苦手だ。人前に立つと、妙に落ち着かない気分になる。
「そうですか。では、ここでお渡しをしておきます」
国王は少し残念そうな顔をしながらも、すぐに了承し、認定証と勲章を俺に手渡した。それらは、ずっしりと重く、俺の手の中にその価値を訴えかけてくるようだった。話が一段落して雑談を少しして終わった。
ミリアの屋敷にやっと帰って休めるな……今日は色々とあって少し疲れたなぁ。肉体的というよりは、精神的な疲労感が大きかった。
馬車に乗り込み、王城を出てミリアの屋敷に向かい帰宅する事になった。馬車の揺れが心地よい。
♢癒やしの膝枕と誤解解消馬車に乗って今日は、ミリアの久し振りの膝枕をしてもらうと、ミリアが満面の笑みを浮かべ、俺の頭を優しく撫でてくれる。その指が髪を梳くたびに、心地よい感覚が全身に広がる。しかし、癒される間もなく、あっという間に屋敷に着いてしまった。
「もう着いたのですか? 良いところでしたのに……もぉ! 気を利かせて遠回りして欲しかったですわっ」
ミリアの"青く透き通ったキラキラした瞳"が、不満げに俺を見下ろす。その頬は可愛らしく膨らんでいる。まるで、駄々をこねる子供のようだった。
「じゃあ……続きはソファーですれば良いんじゃないの?」
俺がそう提案すると、ミリアの目がキラリと輝いた。
「わぁ♡ 良いのですか?」
いやいや……逆に俺も癒やされたいし、甘えたいし……お願いをしたいくらいだよ。疲れた体を休ませたいという気持ちが強かった。
「うん。頼むよ」
「わぁ……♡ はい! お願いしますわっ」
ミリアは、心底嬉しそうな声で返事をした。その声には、喜びが弾けている。
馬車を降りて、リビングにあったソファーでミリアの膝枕で休んでいると、メイドがそっと紅茶とお菓子を用意してくれた。温かい紅茶の香りが部屋に広がり、俺の心を落ち着かせる。
ん? あれ? いつもより護衛やメイドさんから歓迎をされてる感じがするな……なんというか、ミリアとイチャイチャしてると嫌そうな視線を感じるんだけど。今日は、その視線を感じるどころか歓迎をされてる感じだなぁ……皆、ホッとしたような、安堵の表情を浮かべている。彼らの間からは、微かな安堵の息遣いが聞こえてくるようだ。
「緊張して行けなかったんだと思うよ」 俺は、ミリアに説明した。「そうなのですか? いったい……何に緊張しているのでしょうね?」 ミリアは純粋に首を傾げた。彼女の表情は、心底不思議そうだ。青く透き通った瞳には、なぜ娘がそんなに怯え緊張をしているのかという疑問が浮かんでいた。「緊張は、ミリアには分からないと思うけどなぁ……」 俺は、苦笑しながら言った。ミリアは、生まれた時から豪邸や宮殿に住んでいて、父親は最高権力者で、国王よりも権力があって怖い物知らずでしょ。大勢を前にしても平然としてるし……お偉いさんも平民同様の扱いでしょ? それどころか、グラシス国王さえ同様の扱いだったし。彼女の人生には、緊張という感情が入り込む隙がなかったのだろう。「緊張は……この前に初めて知りましたわ……」 ミリアは意外な言葉を口にした。え? ミリアが緊張を覚えたの? スゴイじゃん! ミリアに緊張を与える程の相手がいるの? そんなスゴイ恐い人にでも出会ったのか? 皇帝よりもさらに上の権力者でもいたのか? 俺の頭の中には、たくさんの疑問符が浮かんだ。「え? ホントに? ミリアを緊張させるとかって、そんな凄いヤツがいるんだな?」 俺は、驚きを隠せないで尋ねた。「ええぇ……とても凄いお方ですわ……緊張して震える思いでしたわ……」 ミリアの青く透き通った瞳が、その時のことを思い出しているのか、わずかに揺れる。その声は、感動と畏敬の念に満ちていた。ほぉ……やっぱり人だったのか、スゴイお方……ミリアが敬語を使い震えて褒めるような相手がいるんだな。「へぇ……それは凄いな……俺だったらどうなってたんだろうなぁ……」 俺は、想像力を掻き立てた。ミ
「ユウヤ様……何を……されているのですか?」 ミリアの "青く透き通った瞳" が、少し困惑したように俺を見上げる。その目には、疑問符が浮かんでいた。「ミリアの頬が柔らかくてスベスベで気持ち良いから、触って癒やされてるだけだけど?」 俺は、悪びれる様子もなく答えた。「ううぅ……やめてくださいませ……」 ミリアが頬を赤くして恥ずかしそうな意外な反応をしてきた。ん? ミリアがイチャイチャしてるのを嫌がってる? 嫌がっては無いようだけど……彼女の指先が、俺の腕を軽く叩いた。「え? 何で?」「もう……到着しているのですよね?」 ミリアは、急に焦り出す。その瞳は、屋敷の方向を見つめていた。「うん。15分くらい前にね」「えぇ……それでは屋敷の者が皆、外で待っているのでは?」 ミリアは急に焦り出す。その顔は、真っ青になっていた。 ドアを開けると外でメイドさん達がずらりと並んで待っていたので……ミリアに恥を掛かせる訳にはいかないので、とっさに俺の方が寝てたように眠そうな顔をした。「ふぁぁ~……良く寝た……ミリア待たせちゃったみたいで悪いな~」 俺は、大きなあくびをしてみせた。ミリアが頬を赤くして小声でお礼を言ってきた。「すみません……ありがとうございます。ユウヤ様」「起こさなかった俺も悪いしね……」「その様な事はありません……幸せでした。それに……庇ってもらえるなんて初めてで嬉しいですわっ♡」 ミリアは、 "青く透き通った瞳" を潤ませながら、心から嬉しそうに俺を見つめる。その瞳は、キラキラと輝いていた。そうな
それでも逃げようと機会を伺っていた店主が、出入り口に走ってきた。その目は、まだ諦めていない。コイツには、さらにツライ罰を与えてあげるか……。俺の心に、冷たい決意が宿った。 トゲトゲのウニの様な小さなバリアを膝の関節の間に出現させると、走っていた途中に出現させたので普通に膝を動かしてしまい雷が落ちたような衝撃が、脊髄を駆け上がり強烈な激痛が襲った。そして前に出した足に体重を掛けた瞬間、視界が真っ白に弾け、息すら奪われ気を失う程の激痛が走り、そのまま顔面から転がり激痛で苦しんでいた。顔は土と埃で汚れ、もはや形相と化している。彼の目からは、涙と鼻水が溢れ出ていた。「不法に売られていった子供の苦しみだと思って、そのまま罰を受けててくれ」 俺は冷たい声で言い放った。店主の苦痛に満ちた呻き声が、俺の言葉でさらに大きくなった。「ぎゃぁぁっ!!! クソっ! 何をしやがった!? 痛ぇー!! 許さねぇぞ! クソガキ!! 痛ぇ……クソっ!!」 店主は地面でのたうち回りながら罵声を浴びせる。ウルサイのでもう片方の膝にもバリアを出した。彼の叫び声は、店内に響き渡り、耳障りだった。「はぁ……ウルサイんだけど……黙っててくれる?」 俺がそう告げると、店主の顔がさらに苦痛に歪む。その目には、憎悪と絶望の色が混じっていた。「グゥオー!! 何しやがるんだ! 後で殺してやる! 絶対許さねぇ……」 元気だね……右肘にもバリアを出してみたら痛みで気絶した。店主は全身を痙攣させ、泡を吹いて動かなくなった。その姿は、まるで操り人形の糸が切れたかのようだった。 それを見ていた手下たちが青褪めた顔をし、立ちすくんでいた。彼らの目は、恐怖で大きく見開かれている。その場に張り付いたかのように、身動き一つしなかった。「おい……逃げられると思うか?」 盗賊の一人が震える声で仲間と話す。その声は、絶望に満ちていた。「無理
負傷している兵士に治癒薬を渡して、兵士達に指示を出した。治癒薬は瞬く間に傷を癒やし、兵士たちの顔に驚きと安堵の表情が広がる。彼らの目には、希望の光が宿っていた。「無事な兵士は、負傷してる者を外に運び出して」「はい!」 負傷していない兵士がすぐに動き出す。彼らの動きには、迷いがなかった。「残りの兵士も店から出て逃げる盗賊を捕らえて!」「はい!」 無事な兵士に負傷をしている者を外に引きずり出させ、外には回復をした兵士達が逃げ出してくる者を捕らえる為に店を取り囲んでいた。動きは新兵という訳ではなさそうだった。 店主が、なぜあれだけ堂々と違法なことを堂々と言い、悪びれる様子もなくしていた理由が分かった気がした。この兵士たちを見て確信した。取り締まりの経験がなく店など狭い場所での戦闘経験がない。ということは……この町では、あくどい商売をしても大ごとにならなければ取り締まりをされないってことだ。ここに来た兵士たちは新兵ではなく、動きからしてそこそこの経験を積んだ兵士に見えた。 店には俺と盗賊だけになると店主と、その手下がニヤニヤしだした。彼らは俺を単なる子供と見下しているのがありありと分かる。その顔には、嘲笑と侮蔑の色が浮かんでいた。 (まあ……俺みたいな一人のガキが相手だとそうなるよな……) 俺は、彼らの反応を冷静に分析した。「逃してくれるなら金貨5枚やるぞ? いや、10枚だ! どうだ?」 店主は、いかにも悪党といった顔で、俺を値踏みするように言葉を投げかけてきた。その声には、俺を誘惑しようとする魂胆が見え隠れしていた。 金貨を10枚革製の巾着に金貨を入れて見せてカウンターに置いた。 金貨10枚か……ここなら1年以上くらい遊んで暮らせる金額だな。金貨5枚や3枚とかケチらない辺りが場慣れをしている気がした。初動でケチって兵士が集まってくれば買収する金額が跳ね上がってしまう。初期段階で金貨10枚で逃げられれば安いもんだもんな…&
「なんだ……驚いたぞ、護衛とか言うからよ。それに剣も持っていたが?」 店主は納得して安堵の表情をして、更に疑問に思った事を聞いてくる。警戒が解けたようだ。彼の顔には、疑問が晴れたような清々しさが浮かんでいた。「あれは父親が冒険者で、お金を借りる手続きをするのに剣が邪魔になるから預かっていただけだよ」 俺は、もっともらしい理由を付け加えた。「あぁ……なんだ、そうか……そういう事か」 店主は完全に信じ込んだ様子で頷いた。その顔には、疑念が完全に晴れたような表情が浮かんでいた。そろそろ馬車に着いた頃かな……俺は、内心でそう推測した。♢不正の指摘と兵士の介入 ミリアと兵士が馬車に辿り着いた頃を見計らって、俺は店主に話し掛けた。「えっと……おたくの店って悪質な金貸しですよね?」 俺がそう切り出すと、店主の顔から笑顔が消え、眉間にしわが寄る。その表情は、まるで仮面が剥がれ落ちたかのようだった。「は? なんだ……急に?」 子供のイタズラだと思っているのか、悪い事をしている認識がないのか、もう当たり前となっていて悪事をしているという感覚が麻痺しているのか、素の表情で意味が分からないという顔をしていた。まるで因縁をつけられたという顔をしていて演技だとしたらスゴイな役者になれるんじゃないか? 俺は、彼の表情をじっと観察した。「返済に関して何の説明も無いですし……」 俺は、核心を突く言葉を続けた。「説明だと?」 店主は "ムッとした顔" で聞き返してきた……知らない訳がないと思うけど……説明する義務がある事を知らないで通そうとしているのか? まあ……知らないにしても、忘れていたとしても、どちらにしても違法だ。彼の目には、わずかな動揺の色が浮かんでいた。
軍人さんに不安を抱きつつも任務内容を話した。「貴方の任務は、ミリアの護衛とお金を借りる振りをしてもらう事です。それと、金貸しの不正があった場合の証人ですね。字が読めない人への説明が無く、返済金の合計額を言わないで、借りたお金の本当の返済金額を返済期日を過ぎてから返済しろと言ってくるのも違法ですよね?」 俺が確認すると、軍のお偉いさんを見ると頷いていたので問題は無いようだ。彼の表情は、事態の深刻さを理解したように引き締まっている。「不正の取締だったのですか……」 お偉いさんは、合点がいったように呟いた。「そうですけど?」「でしたら不正があった時の為に、兵士を手配をしておきます」「よろしくお願いします」 俺は深く頭を下げた。兵士の準備も出来て3人で金貸しのある店の近くまで馬車でやってきた。馬車の中は、微かな緊張感とミリアの浮かれた空気が混じり合っている。ミリアは窓の外を眺め、楽しそうに鼻歌を歌っていた。「さ~て……ここからは歩きで向かうよ」 俺は馬車を降りて、2人に声をかけた。「はぁ~い」 ミリアは……なんというかデート気分なのか楽しそうで、足取りも軽やかだった。一方の兵士さんは緊張で一言も話さず、緊張しきっていた。その顔は、まるで堅い岩のようだ。額には、冷や汗が滲んでいた。「はい!」 兵士は相変わらず軍人らしい大きな声で返事をした。「喋り方に気を付けて下さいよ……演技がバレたら終わりですからね?」 俺は、再度釘を刺した。「はい……」 兵士の声はわずかに小さくなった。その声には、反省の色が滲んでいる。「ミリアの名前は?」 俺は、もう一度確認した。「はい……ミーアですよね?」「はい、あってます」 店に入ると、偉そうな店主が自ら対応をしてく